バードストライク(風力発電機と鳥類の衝突事故)
Bird strike
増加するプロペラ型風力発電機と鳥類の衝突事故
ここ数年風力発電機が急増し、鳥類が衝突する事故が多発しています。2025年8月現在、北海道では103羽の海ワシ類(オオワシ5羽、オジロワシ98羽)が風力発電機のブレードと衝突(バードストライク)して収容されており、その多くが死体となって発見されています。また、研究所で独自に行っている現地調査(パトロール)では海鳥や希少種以外における事故発生も確認しており、報告・回収される被害鳥はごく一部であり、実際の事故発生数はさらに大きいものであると考えています。日本国内だけでなく、海外の風力発電が盛んな地域においても多くの鳥類が衝突し、死亡している事が問題となっています。

事故の軽減策として風力発電機の視認性を高くする工夫が考案(提唱?)され、採用されている場所もありますが、根本的な解決には至っていません。運ばれてくる個体における生存率や組織の損傷の度合いを踏まえても、バードストライクは致死性の高い事故であると認識されています。死体のほとんどにおいて体躯や翼部の離断が確認されるような事故です。近年増加傾向にある小型風車の被害と思われる個体の中には生存して無事収容ができた個体もいますが、翼部や嘴などの突出部の受傷が多く、命を取り留めても野生下での移動や採餌などの行動が制限されることが考えられ、発見が遅ければ受傷が原因で餓死に至るケースも想定されます。
致死性の高い事故は、危険に遭遇した個体が学習して次の行動を変化させるような生物側の適応が難しいため、希少種の個体数を減少させ絶滅を助長してしまいます。早急な人間社会側での対策が求められますが、設置後の風力発電機への着色は一定の効果があるものの大きな費用が必要となるため、開発計画の段階において鳥類やコウモリ類の重要な生息地には風力発電機を設置しない等の配慮が最も重要であると考えられています。


