生きてる?


 2月下旬、1羽のハイタカが民家の庭で保護されました。グッタリと身体を横たえ、身動き一つしません。微かな呼吸と、冷たくなっていない事だけが、この鳥がまだ死んでいない事を物語っています。大至急、高濃度の酸素が流れるアクリル製の小部屋に入れ、身体を湯たんぽで温めます。
目は閉じられたまま


 目は閉じられたままですが、時々小刻みに頭を振るわせていることから、建物と衝突して頭を強打したと思われました。
 酸素室の中で、輸液や脳の血管に作用する薬を与え、奇跡を信じる時間が流れます。
生死の境を彷徨い


 3日目、まだ意識はモウロウとしているものの、上半身を起こして壁によりかかるようになりました。一日のうちの大半は眠ったままですが、ほんの数分間だけうっすらと目を開けるようになりました。頭や眼球が震える脳症状はまだ無くなりません。
保育器に引っ越しました


 4日目、ようやく意識が戻ってきたハイタカ。人間用の保育器の中で酸素と輸液、投薬が行われています。細かく刻んだ肉を少し、ピンセットで口の中に入れると、何とか飲み込んでくれるようになりました。
意識が戻っても足腰立たず


 一週間後、目つきがしっかりしてきましたが、相変わらず足腰が立ちません。糞や尿で身体が汚れないように、頻繁に下敷きのタオルを取り替えなければなりません。人間と同じように、細やかな看護が必要です。ピンセットで餌を差し出すと、自ら受け取るようになりました。
  たくましい生きる力


 10日目、人に頼り過ぎず、自ら生きる力を引き出すため、心を鬼にして、細かく切った肉をトレイの中に入れて採餌を促します。足腰が立たない身体で、必死に翼を使ってバランスを取りながら一生懸命餌を食べる姿に、そっと見守るスタッフに熱いものがこみ上げます。
 
   
  自らの足でしっかりと


 来院から一ヶ月以上が経過した四月初旬。 入院ケージの止まり木に両足でしっかりと立つハイタカの勇姿です。バランスを崩す事もなく、辺りを伺う余裕すら生まれています。
 
   
  お粥から固形食へ?


 大きめの肉をしっかりと両足でつかみ、クチバシで細かくちぎって食べています。野生に帰る日に備えて、これから徐々に野外での食生活を再現して行きます。
 
   
  空中でも自由自在


 飛翔能力もだいぶ戻ってきました。狭い入院室の中でも、小型のタカらしく巧みに方向転換し、ふたたび止まり木に降り立つ事ができるようになりました。世話の時、頭を蹴られた人も。。。
 
   
  春よ来い!


 4月10日。今日の釧路はまた零下。病み上がりの身体で、獲物を捕って暮らして行くにはまだ過酷な季節です。
 しっかりとリハビリを積みながら、春の息吹を待ちましょう。