迷い込んだクマタカ


 オホーツク海を沿いのある町で、有害鳥獣捕獲を目的に設置された罠にクマタカが入り込んでしまったと一報が入りました。「胸に血がついていて怪我をしているようだ」とのことだったので、すぐさま獣医師が現場へ向かい、センターに緊急収容しました。
そのう破裂


 タカは一見元気そうでしたが、なんと首から食べた餌と思われる肉片がこぼれ落ちています。羽毛をかき分け、調べてみると食べ物を一時的に貯めておく「そのう」が約5pほど裂けていました。食後、そのうが膨れた状態で罠の中で暴れ、受傷してしまったようです。
念入りに縫合


 一時的にそのうに溜められた食べ物は、食道から胃へと運ばれます。食べた物が外にこぼれてしまうことも問題ですが、内臓が外に露出している状態のため、重度の感染症を起こしては命に関わります。全身麻酔をかけ、すぐに縫合手術を行いました。液体を飲んでも漏れることがないように、そのうを吸収糸で念入りに縫い合わせた後、皮膚を整形します。
食事制限中!


 縫合直後は、そのうをあまり大きく膨らませてはいけないので、食事は少量で我慢してもらいます。一日の必要量を何回かに分けて与え、そのうと皮膚が癒合した頃を見計らって抜糸を行いました。ようやく、お腹いっぱい食べても大丈夫! リハビリを積んだ後、クマタカは元気よく自然界に戻って行きました。二度と悲しい再会をしないことを祈っています!