新得町で保護された鉛中毒のオオワシ


 2月8日、上川郡新得町の林道で衰弱し、保護された若いオオワシです。意識はあるものの足腰は立たず、痩せ衰えています。さらに、尾羽は緑色の下痢でベッタリと汚れていました。
症状などから鉛中毒を疑って血液を調べると、機械の測定限界(0.6ppm)を超えた極めて高濃度の鉛が検出され、重度の鉛中毒症に罹っている事が判明しました。すぐに点滴を介して解毒剤を投与し、高濃度の酸素を導入したICUに収容しました。
翌日にはやや状況の改善が見られたものの、依然として血液中の鉛濃度は高く、脳障害によると思われる奇声を上げ続けています。鉛中毒の治療には少なくとも数週間かかり、完治せずに死亡してしまうケースも少なくない、恐ろしい病気です。集中治療を行いましたが、残念ながら重度の脳障害により、一週間後に他界しました。

 猛禽類の鉛中毒は、獲物に撃ち込まれた鉛の銃弾を、肉と一緒に食べてしまう事によって起ります。解体された後に猟場に放置された獲物や、被弾したものの逃げ、後日死亡したシカなどは猛禽類の目に恰好の餌として映り、この悲劇を招いてしまいます。
北海道では2000年から鉛ライフル弾(写真)の使用がエゾシカ猟で禁止になり、2004年からはヒグマを含む大型獣の狩猟において全ての鉛弾(鉛ライフル弾と鉛散弾)の使用が禁止されました。それにもかかわらず、依然として猛禽類の鉛中毒が発生し続けている原因は、この規制を遵守せずに鉛弾を使用し続けているハンターがいるからに他なりません。
鉛中毒は北海道だけの問題ではありません。全国的な鉛弾の撤廃のみが根本策だと考えています。