シマフクロウの保護


「シマフクロウを知っていますか?」シマフクロウ基金作成 より図改変
*「シマフクロウを知っていますか?」のパンフレットはこちらのサイトにて参照できます。
シマフクロウは北海道に生息する大型のフクロウですが、その生息数は約140羽と今まさに絶滅の危機に瀕しており、環境省では生息環境の保全や救護活動といった保護増殖事業に取り組んでいます。春には繁殖状況を把握するために、設置した巣箱を回り、雛の成育をチェックする調査を行っているのですが、2011年は気になるシマフクロウの雛が見つかりました。
巣箱の入り口に佇む雛


 巣箱の中では2羽の雛が育っていましたが、2羽の体格に大きな差が出ており、後から産まれた小さい方の雛に成育不良が疑われました。親はちゃんと給餌を行っていることから、しばらく様子を見守っていましたが、先に産まれた雛が巣立つ頃になっても、体躯の成長度合いが改善しません。そのうち、体重の減少や活動性の低下、また血液検査でも貧血や栄養不良が疑われたことから、悩んだ末に親から離して保護することにしました。
センターに保護後


 WLCでリハビリ中のシマフクロウの鳴き声を親のものと思ったのか、センターに来てから数日間は、夜になると応えるようにひっきりなしに鳴いていました。飲み込みやすいように魚を小片にして与え、栄養改善に努めましたが、骨格も羽も全体的な成長が芳しくありません。
ちょっと小柄です


 成育異常が栄養性の問題であれば、改善後に親元に戻すことを考えていましたが、体のサイズは正常の幼鳥よりも一回りほど小さいまま、とうとう成長がストップしてしまいました。特に体の右側の目や羽が小さく、左右非対称であること、そしてストレス時に頭が上下逆さまになってしまう神経症状が見られることが判明し、野生復帰は困難と判断しました。
頭部反転の神経異常
通称「ちび」です


 この個体は今も元気で、センターでできるだけ幸せに暮らしてもらえるよう努めています。一方でこの個体にしか出来ない役割として、これからたくさんの人にシマフクロウの現状を知ってもらうためのメッセンジャーになってもらおうとも思っています。
腕に据えているところ


 シマフクロウの保護には多くの人の理解と協力が必要です。「ちび」と共に各地を回れたら、と考えています。例えば講演会などのイベントで、間近に見て、時には触れ合ってもらい、命の素晴らしさを感じてもらいたい。そのために日々、訓練を重ねています。いつの日かみなさんと会えることを祈って…