ロシアの動物園に往診しました


 ロシア・サハリン州のユジノサハリンスク動物園から往診を依頼され、園内の動物病院でオオワシの外科手術を行いました。このオオワシは昨年夏、同島北部の巣内で、翼が折れた状態で発見され、動物園に収容されていました。専門的な処置が行われないまま、狭いケージの中で長期間飼育されていたため、骨折した部分は"くの字"に折れ曲がったまま癒合していました。
関節の整復と組織の再生を促す治療


 翼を引きずりながら手首を常に地面や壁に強く打ちつけていたため、皮膚は裂け、筋肉が大きくえぐり取られ、骨の一部が見えている状態でした。
 損傷が大きく、翼の切断も選択肢の一つとされていましたが、全身麻酔と点滴を行いながら、持参した機材を使って壊死した部分を丁寧に取り除き、組織を再生させる特殊なパッチを移植する手術を行いました。
日頃の専門家交流は重要


 動物園には獣医師が2名おりますが、そのうちの一人は今年春に釧路湿原野生生物保護センターで鉛中毒に関する研修を受けております。今回は、電気メスの使い方や麻酔管理などの専門技術を習得してもらいました。
 北海道と宗谷海峡を挟んで40km余りのサハリン。渡り鳥や希少種の保護、さらにはオホーツク海での油汚染事故などに備えて、日ごろから緊密な協力体制を整えておくことはとても大事です。
翼を失わずに済みました


 麻酔から覚めたオオワシ。翼を引きずることもなく、落ち着いた様子です。専門的な治療までに長い時間を要してしまったこのワシは、残念ながら野生に戻ることはできません。
 ユジノサハリンスク動物園の副園長は、日ロ交流の鎹(かすがい)になってくれたこのオオワシを大切に飼育し、将来大きなケージの中で繁殖させたいと話していました。