1両編成の列車で釧路駅を出発


 近年、列車との衝突事故によって多くのワシ達が傷ついたり、命を落としています。2000年から現在までに確認されているだけでも、オオワシ8羽、オジロワシ12羽が犠牲になっています。今年2月、事故が多発している地域の現状を把握するため、JR北海道の協力のもと、根室本線と釧網本線の沿線を車窓から調査しました。
シカ、シカ、シカ


 事故に遭った猛禽類の食道や胃からは、未消化のシカ肉が発見される事が多く、列車にひかれたエゾシカの死体を求めてワシが線路内に侵入し、列車と衝突していると考えられました。今回の調査でも、列車の接近を気にする事もなく、線路上を悠々と大群で移動するエゾシカを簡単に目にすることができました。
線路の上や脇には・・・


 特に雪が深い場所では、雪の無い線路上がエゾシカにとって日常的な移動の経路となっている様子で、線路の上や脇では数多くのシカの轢死体を見ることができました。列車と衝突したシカは、列車の安全な通行のために線路上から除けられているものの、多くは線路のすぐ脇に放置されている様子でした。
肉に魅せられワシ達が


 今回の調査では、線路の脇でシカの死体に群がるオオワシやオジロワシの姿を多くの場所で観察することができ、路線とシカが作り出すワシの採餌環境が、列車との衝突事故を誘発する深刻な要因になっている事があらためて明らかとなりました。
駅のすぐ横でも


 ワシの列車事故は人里離れた場所だけで発生しているわけではありません。この写真のように、駅のプラットホームから近い場所でも、エゾシカの死体に群がるオオワシとオジロワシの姿を観ることができました。
アッ、危ない!!


 餌を食べることに夢中になったワシ達は、列車の接近に気付くのが遅れ、事故に遭っていると考えられます。列車を単なる「物」としてとらえ、警戒心が薄いことも逃げ遅れる要因の一つになっているのかもしれません。
車窓から見つけたものは


 調査の初日、車窓からオジロワシの轢死体を偶然発見しました。調査終了後、路線の保守を担当されている方にお願いし、特別な車両で死体の回収を行わせていただきました。線路のすぐ脇で、前日降った雪にうっすらと覆われていたのは、若いオジロワシでした。
実際に被害に遭っている数は?


 この鳥のように、雪で隠されてしまったり、動物に食べられたりして、回収されず消失してしまっている被害鳥も数多く存在すると思われます。ワシの列車事故を防ぐため、餌となるシカの轢死体を確実かつ速やかに線路の近くから撤去する仕組み作りが急がれます。