立てないタンチョウ


 10月も終わりに近づいた頃、別海町の牧場にケガをしたタンチョウがいるという連絡が入りました。現場に駆けつけると、若いタンチョウが横たわっていました。
 このところタンチョウの保護収容が続いており、本来の受け入れ先となっている釧路市動物園は手が回らないとのことだったので、一時的に釧路湿原野生生物保護センターで受け入れることになりました。
  電線と接触し、墜落


 一見、大きなケガは見当たりませんでしたが、全く起立することができず、足がわずかに動くだけでした。保護した時の状況から、電線に接触して地面に叩き付けられたと考えられます。レントゲン検査や臨床症状から、脊椎を損傷していることが疑われました。
 この時期、タンチョウは食べ物を求めて、収穫後の畑によく飛来します。その際、周囲にある電線に接触する事故が多発しているのです。
 
  長い長いリハビリの始まり


 脊髄が損傷すると、傷ついた部分よりも後ろにある足などが麻痺してしまいます。幸いこのツルは、自力で排泄することができました。脊髄損傷のリハビリは長い期間を要します。完全に歩けるようになるかどうかは、まだ全く分かりませんが、この小さな足の動きに希望を託し、機能回復に挑戦することになりました。
 1週間ほど経ったころ・・・筋肉をぬるま湯でマッサージしている最中、前よりも足をよく動かせるようになってきたことに気が付きました。
 
  わずか・・・でも確かな希望


 さらに1週間経つと、徐々に足先を突っ張るようになってきました。立てるようになるにはまだ程遠いですが、なかなか良い反応です! 現在、タンチョウは身体をハンモックで吊られ、足を下方に突き出した状態で入院しています。最近は以前よりも足全体に力が入るようになってきたと見え、このハンモックから"脱走"するようになりました。ツルの反応に一喜一憂しながら、できるだけストレスを与えずに良いリハビリを行えるよう、新たなハンモック作りに日々取り組んでいます。