両国を結ぶ架け橋に
厳戒の海を舞う
北海道の東部。目前には北方領土国後島が迫り、霧にかすむ水平線には海上保安庁の巡視艇の姿が見えます。人間社会が作り出した「国境線」の存在を巡り、日本とロシアの距離は今年さらに遠くなったように感じられます。
厳戒の海域の上を、音もなく横切る大きな影・・・冬の使者オオワシです。

両国を結ぶ架け橋に
繁殖地のロシアからオホーツク海に沿って徐々に南下し、この時期数多くのオオワシやオジロワシが道東に集まってきます。サハリン(樺太)、北海道そして北方領土を、パスポートもビザも持たずに自由に行き来し、厳しい冬を乗り切るワシ達。自らの生活を見本に、隣国に住む人間同士の共生の在り方を示しているのかも知れません。

奇跡の大地
凍り始めた岸辺に、ずらりと並んだオオワシ達。とまり木が少ないこの地域では、見通しの良い開けた場所が数少ない安泰の地なのです。身を切るような強風にも動じず、餌捕り以外のほとんどの時間を氷上で過ごします。絶滅の危機に瀕したワシの姿を、これほど身近に観られる場所は非常に珍しく、道東は世界に誇れる「奇跡の大地」と言えるのです。

来年も、その先も
低気圧の接近に伴い、年末の海は時化てきました。打ち寄せる波が、浜辺で餌を捕っていたワシ達に襲いかかります。一際強い風を大きな翼で受け止め、まるで映画のコマ送りを見ているかのように、ワシの身体が宙に舞いました。来年も、その先もずっと、彼らと共に生きて行きたい! 「ワシ達の聖域」を訪れる度に、その思いが強くなって行くのです。
