ベトナムで感染症調査

執筆:渡辺有希子

フィールドワーク・野外調査

北国から南国へ

ベトナムの首都ハノイの風景です。OIE(国際獣疫事務局)によって行われた鳥インフルエンザの調査に、野鳥から安全にサンプルを採取するための専門家として参加しました。
食糧や調査に必要な品々を買い求め、観光をする時間もないまま調査地に向けて出発です。

いつか見た風景?

首都はたくさんの車とバイクで喧噪とした雰囲気でしたが、一歩街の外に出ると、田園地帯が広がるのどかな景色が続きます。5時間ほど車に揺られて、ようやく今回の調査地である国設保護区「シャンツィ(Xuan Thuy)」に到着しました。作戦会議のあと、いよいよ野鳥の捕獲作業に出発です。

いざ調査地へ!

調査地への道程は決して平坦ではありません。時には漁師さんに船を借り、湿地の奥へと向かいます。地元の人々の協力なくして、どのような調査も成り立ちません。ベトナム語は挨拶程度しか勉強していないので、英語と身振り手振りのジェスチャーが頼りです。でも現地の人は皆とても親切で、良い人ばかりでした。

南国の果物は実にカラフル

調査の合間をぬって、近くの村へ食糧の買い出しに行きました。日本では見たことのない、色とりどりのフルーツがたくさんありました。異国での調査活動では、見ることも食べることも、大きな楽しみです。

現地の臨時研究室

安全に捕獲した野鳥に、渡りや移動を調べるための小さな標識を付けた後、検査のためのサンプルを採取しました。
鳥に極度のストレスを与えないよう、熟練者による迅速かつ手際よい取り扱いが特に重要です。それぞれの分野で経験を積んだ調査者が、各種の作業を分担して実施しました。

お化粧をしたような鳥

放す直前のアオショウビン。とてもカラフルで、まるでお化粧を施したみたいです。鳥インフルエンザなど、人獣共通感染症については、確かに注意をする必要があります。しかし全ての野鳥が、危険な病原体を持ち運んでいる訳ではありません。逆に、人が飼っている鳥(家禽)が、自然界の野鳥に病気を感染させる可能性もあるのです。家禽、野鳥、そして人間の感染状況を正確に把握するための基礎調査は、恐ろしい病気を未然に防ぐためにはとても重要なのです。 (調査参加者 渡辺有希子)

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