相次ぐオオワシ他の収容

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保護した鳥(猛禽類)

苫前町からの搬送

 2014年1月23日苫前町の風力発電施設の風車の下でうずくまっている所を発見されたオジロワシがWLCに搬送されてきました。釧路まで約400㎞の雪道を道内各所にある環境省事務所の連携によるリレー方式で搬送し、夜10時頃WLCに到着しました。右側の橈骨と尺骨が骨折し、また低体温と脱水で非常に衰弱していましたが、当日中に運んでくれたお陰ですぐに処置を開始することができ、一命を取り留めることができました。

橈尺骨の骨折

 これまで風車との衝突事故に遭遇したワシの場合、骨は粉砕していることが多く、今回のオジロワシの骨折状況から推察すると、風車による気流の乱れに巻き込まれたか、ブレードにかするような形で接触し、高所から落下して骨折が生じたことが推察されました。骨折部位はピンニング処置を施しましたが、大切なのはこの後のケアです。骨折の状況から、橈骨と尺骨が一緒に癒合してしまう可能性があり、そうなると翼の開閉に支障が生じて上手く飛ぶことができなくなります。こまめな診察とリハビリが必要です。

看護の難しさ

野生動物の収容は、収容期間中に問題が生じることが多く、リリースまでこぎつけるのはとても大変な作業です。ストレスにより別の障害が起きることもあれば、活動制限のため狭い部屋で飼育した結果、別の部位を痛めてしまうこともあります。また人馴れしすぎて野外に返せなくなることもあります。治療に加えて、これらの予防や個体に合わせた工夫をしていく必要があります。

個体の治療と共に環境の治療も

 12月から1月にかけて、オジロワシ、オオワシの収容が相次いでいます。原因は様々で、列車衝突や交通事故、風車事故…どれも人間活動に起因しています。北海道に渡来したワシ達が、無事に越冬し、また繁殖のため北の地へ戻るまで、安全で住みよい環境づくりを皆さんと一緒に手がけて行きたいと、被害を受けたワシ達を収容する度に痛感します。

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