北海道の東の果てから

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保護した鳥(猛禽類)

北海道の東の果てから

 1月下旬、北海道東端にある根室市で一羽の若いオジロワシが保護されました。
一見、大きな外傷はなく、両足でしっかりと起立もしています。しかしながら、口を半開きにし、首も前に伸ばして何となく気持ち悪そうな表情。。。

喉が膨れています

 少し落ち着いたところで、もう一度観察してみると…正常な姿勢に戻ったワシの喉が大きく膨れているのがわかりました。この位置には食道の一部が拡張した「そのう」と呼ばれる袋があり、食べたものを一時的に保管しておく役割があります。

レントゲン検査でも

 レントゲンを撮ってみると、案の定。そのうの中に何やら細かなものがギッシリと詰まっています。上のレントゲン写真は、ワシの頭(レントゲンには写ってません)が画像の左側、尾が右側になるように、身体を左横から撮影したものです。

中身は何?

 そのうの内部がよく見えるように、レントゲン写真の色を反転してみると、長い三日月型をした小さな粒がたくさん入っているのが解ります。実はこれ、魚の「耳石」。耳石は平衡感覚を調整する機能を持ち、頭骨の中に一対ずつ存在する炭酸カルシウムの結晶です。

指先の古傷

 なんと、このワシは魚の頭ばかりを大量に食べていたことが解りました。検査を進めてゆくと、左翼の指先が骨ごと欠損する古傷を負っていることが明らかになりました。新たに伸びかけた風切り羽も変形し、うまく飛ぶことができず、水産加工場や港で得られる魚のアラを食べながら必死で命を繋いでいたのでしょう。

難関ほどチャレンジする価値あり

 今回の直接的な収容原因は「食べ過ぎ」。久しぶりに餌にありつき、そのうと胃が満杯になるまで一気に食べたことにより、急増した体重を傷ついた翼で持ち上げることが出来なかったと思われます。風切り羽がしっかりと生え換わった段階で、飛翔能力の復活を試み、野生復帰に向けてチャレンジしてみることになります。

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