それぞれのペースで

執筆:

保護した鳥(猛禽類)

それぞれのペースで

 今年も数多くの傷ついた猛禽類が運び込まれました。センターに着いた時にはすでに冷たくなっていた者、一命を取り留めたものの二度と野生に戻ることが出来ない身体になってしまった者。幸運にも野生に帰れる望みが残った鳥達は、今日もそれぞれのペースでリハビリに励んでいます。

ジャンプ!

 左の翼を骨折し、手術によって回復したノスリは、入院室の中で枝から枝へ飛び移る練習を開始しました。使っていなかった筋肉は急速に衰え、関節の開きも悪くなってしまいます。このため、患部のマッサージを繰り返しつつ、計画的に運動を促すことにより、野生復帰に必要な心と身体を取り戻す手助けをして行きます。

4度目の正直!?

 リハビリケージでの生活に、どこか慣れているようにも見えるこのオジロワシ。それもそのはず、2004年に初めて収容されたこのワシは、3度の野生復帰を経験し、その都度数ヶ月後に別の原因で再収容された経験の持ち主なのです。収容される度に、リハビリも振り出しに戻り、現在ようやく第一段階の訓練を卒業しようとしています。  

チャンス到来!

 地上から高い枝、枝から枝への飛翔を繰り返すことにより衰えた筋肉は鍛えられますが、短期間で飛翔能力を取り戻すことは簡単ではありません。鳥の羽毛は規則的に生え替わります。ワシでは夏を中心に、飛ぶために必要な大きな羽根が抜け替わり、その時期は思うように訓練が進まないのです。ようやく迎えた寒い季節こそ、野生に戻る最大のチャンスなのです。

砕けたヒジがつながりました

 交通事故により、左のヒジが砕けたシマフクロウ。手術によって無事つなぐことが出来ました。ようやく翼を動かせるようになったものの、まだあまり無理をさせられません。それでも、人が近づくとギプスが取れた翼を大きく膨らませ、堂々と威嚇のポースをとる姿は、野生の心がまだ残っている証拠。

気迫十分!

 気迫溢れる鋭い目つきも、とても重傷を負っていた鳥とは思えません。野生に帰れる可能性が少しでも残っている限り、人間がその夢を断ち切ることなくリハビリに励んでもらう予定です。結果として野生復帰が難しいと判断された場合には、代わりに子孫を野生にお返しできるように、飼育下で繁殖してもらいたいと思っています。

次は僕が!

 先日無事に野生復帰を果たしたオジロワシの成鳥と同居していた、同種の幼鳥。次は僕が!と言わんばかりに、最終段階のリハビリに励んでいます。地上から高いとまり木へ軽々と飛び移り、生け簀に入れた生きた魚も上手に捕ることが出来るようになりました。

卒業は間近

 高い枝から、羽ばたきと滑空を交えて飛翔する姿は、野生に帰る日が近づいたことを物語っています。同居していた成鳥に向かって、時折甘えた声で餌をねだっていた頃が懐かしく思い出されます。親心を隠し、心を鬼にしてゴールである野生復帰を一緒に目指します。

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