挨拶だったと思いたい

執筆:

保護した鳥(猛禽類)

野生に帰る日

 今年4月、全身に大やけどを負って運び込まれ、野生生物保護センターで治療を受けていたオジロワシ(全身大やけど野生を目指す)。足指とクチバシに大きな後遺症を負いながらも、懸命に続けてきたリハビリテーションの成果が実り、今日ついに野生に帰る日がやってきました。

失った物も大きいけれど

 身体に負った火傷の状況から、負傷の原因は配線線による感電と思われました。上クチバシは大きく変形し、少し顔つきが変わってしまいましたが、幸いなことに呼吸や採食には支障がありません。焼けただれていた瞼(まぶた)も、整形によりほぼ元通りになりました。

命あってこそ

 今回の症例では、感電による壊死の進行を食い止めるために、両足各2本ずつ指を切断せざるを得ませんでした。身体に大きなハンディキャップが残ってしまいましたが、オジロワシは残された4本の指を使って上手に枝に留まったり、生きた魚を捕ったりすることが出来るようになりました。野生の逞しさを改めて痛感させる生命力です。  

不測の事態に備えて

 広大な釧路湿原に面した川沿いの山林に、オジロワシを放すことにしました。いよいよ野生に戻る瞬間です。状況を察してか、輸送ケージの中でソワソワしていたワシは、扉が開かれると勢いよく外に飛び出しました。

最初の一歩!

 広大な釧路湿原に面した川沿いの山林に、オジロワシを放すことにしました。いよいよ野生に戻る瞬間です。状況を察してか、輸送ケージの中でソワソワしていたワシは、扉が開かれると勢いよく外に飛び出しました。

大きな翼で風を漕ぎ

 軽やかなステップで大地を蹴り、大きな翼が力強く羽ばたきます。身体がフワリと宙を舞い、オジロワシは見守るギャラリーの位置をしっかりと見極めて、一番安全な方角に向かって一直線!

挨拶だったと思いたい

 挨拶のつもりなのでしょうか? 何日も治療を手がけてきた獣医師達の真横をかすめるようにして、オジロワシは本来居るべき世界へと帰って行きました。

風の精は大空の彼方へ

 羽ばたきを繰り返しながらオジロワシの姿はどんどん遠くなり、風を捉えて青空バックに大きく旋回! 悲しい再会の日が来ないことを願いつつ、そっと双眼鏡を降ろしました。

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