生息地保全のための野外調査(国内)
Field survey for habitat conservation (Domestic)
オジロワシの学術捕獲・標識調査
当年生まれの雛の素立ちのシーズンに合わせて、標識調査を行っています。検診・採材・標識等の一連の作業が獣医学的な安全性が担保された中で行われるよう、調査チームには獣医師が必ず参加しています。
雛を捕獲する際には、親鳥の反応や行動を確認し、調査圧が最小限となるよう配慮して行います。雛を捕獲する際に、巣の内部が確認できる場合には巣内の環境や食べ残し等を確認し、居住空間や餌資源等、子育ての環境が整っているのかを確認しています。
捕獲した雛には、体重や体温の測定・聴診・視診・採血等を行い、健康状態の確認をします。さらに、現地での診察に加え、持ち帰ったサンプルを用いて感染症の診断、病理検査(血液塗抹検査や原虫検査)、遺伝情報に関する実験と保存(性別判定や多様性分析)等を大学等の学術研究機関と連携して行います。
捕獲した全ての雛には個体識別のための固有の番号が振られた足環を標識し、その後の分散や繁殖成績の評価に役立てます。標識の年月日の記録は、野生生物では困難とされる年齢の正確な把握を可能とするため、再発見や収容があった際に詳細な個体情報に基づいた対応が可能になります。
標識調査は、標識の瞬間だけでなく、観察と記録を長期的に重ねていくことが、貴重なデータを生み出す礎となる調査です。このような調査を私たちは30年近く行っています。
また、雛の状態(特に体重や換羽状況)や必要性に応じて、送信機をとりつけることもあります。巣立ち後の時期は、巣外育雛期と呼ばれ、親鳥のサポートを受けながら活動範囲を同心円状に拡大させていく時期であるため、保全の対象も営巣中心域から雛の成鳥段階に合わせて連続的に広げていく必要がありますが、送信機のデータを参考として保全の内容が適切となるよう見直すことが可能になります。
