交通事故コミミズク

執筆: 

保護した鳥(猛禽類)

交通事故により頭を強打したコミミズク(釧路)

2009年1月、釧路市内の道路脇で衰弱して発見されたコミミズクです。交通事故で頭を強打したと思われ、脳障害により目は見えず、バランス感覚も失って、ただ頭を揺り動かしながら立ちつくすだけの状態でした

ICUの中で輸液や高濃度酸素療法などを施したところ、視力や平衡感覚を徐々に取り戻してきました。最近では、ようやく差し出した餌を口にするようになりました。

診察や治療の際に猛禽類が暴れると、獣医師と鳥の双方が思わぬ怪我を負ってしまいます。安全性を保ちながら、鳥を優しく保定※するために、小型猛禽類用の”特殊な上着”を着せて診療に当たります。 ※安全に動けないようにする事

動きや反応が早くなり、こちらを見る目にも力が出てきました。まだ少し足取りがふらつきますが、体調は徐々に良くなっています。収容された当初は非常に危うい状態だったのですが、驚くべき生命力です。何よりも、発見・保護した方の判断が適切で、すぐに治療を開始できたことが大きいと思います。

収容から約一週間、コミミズクは入院室の中を上手に飛び回れるまでに回復しました。
カラスが寝静まる夜になってから、保護してセンターに連れてきてくださった方の手から野生に返していただきました。

雪の上に放たれたコミミズクは、一瞬立ち止まってこちらを振り返り、まもなく音も無く夜空に飛び立ちました。私達の真上をゆっくりと大きく円を描くように飛んだのち、漆黒の湿原へと消えて行きました。

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