しっかりとした足取りで
列車にはねられ足を骨折
釧路市の音別町で、特急列車にはねられたタンチョウが収容されました。本来、傷病タンチョウの受け入れ先になっている釧路市動物園では、諸事情により引き受けることが出来ないとのことでしたので、環境省と協議した結果私達が治療を試みることになりました。

本来曲がらない所が。。。
左足の関節付近が不自然に曲がり、大量の鮮血が全身の白い羽毛にべったりと付いています。早速血液検査やレントゲン撮影などを行うと共に、輸液などによる救急治療を開始しました。

骨は4つに割れて
身体検査で疑ったとおり、左足の中足骨が関節付近で4つに割れていました。列車と衝突した事を考えると、肝臓や腎臓などを大きく損傷していても不思議では無いのですが、検査の結果、体腔内に大量出血等は確認されませんでした。

全身麻酔下で緊急手術
関節付近における複合骨折の治療には経験が必要とされます。身体への負担を考えると、長時間全身麻酔をかけることもできません。齊藤獣医師の執刀により、ガス麻酔下で特殊なピンを用いた整復術を実施しました。約30分で手術は無事終了し、足は元の形に戻りました。

骨片は元の位置に
レントゲン写真でハシゴのように見えるのは、骨を繋ぐための特殊なピン等です。鳥の骨は竹のように中空で、最小限のピンを用いて細かく割れた骨がいずれも動かないように止めるためには、ピンを打つ位置と角度がとても重要になります。

ピンやギプスが付いたまま
数日後。タンチョウはすでに立ち上がり、ピンやギプスが付いているにもかかわらず、自分の足で入院室内を歩き回っています。食欲は旺盛で毎日魚や穀物をたくさん食べています。しばらく時間がかかりますが、ゆっくり静養してもらいましょう。

しっかりとした足取りで
9月初旬、ギプスが取れ、しっかりした足取りで入院ケージの中を所狭しと歩き回るタンチョウ。バラバラに折れていた足の骨はしっかり付き、食欲も旺盛、体調は万全です。とうとう野生に戻れる日がやってきたのです。

再び野生に!
ある晴れた日の朝、タンチョウを専用の木箱に入れ、生息に適した湿原近くの清流まで車で運びました。木箱の扉を開けたとたん、ツルは勢いよく外に飛び出し、一瞬立ち止まった後、力強い助走に入りました。

久しぶりのフライト
大きな身体がフワリと宙に浮き、真っ白い翼を羽ばたかせながら、一直線に川面に向かって行きます。
骨折していなかった方の足に付けた、識別用の黄色い足環が、最後にキラリと目に焼き付きました。

中州で一安心
浅瀬に降りたタンチョウは、水の中をゆっくりと歩きながら落ち着ける場所を探しているようです。ようやく広い中州に上陸し、ツルも私達も一安心。しばらくは無理せず、本格的な冬が来る前にしっかりと体調を整えてもらいたいものです。
