またまた海鳥
またまた海鳥
今年は例年になく海鳥が保護されます。6月中旬、釧路市内の住宅街で保護されたのは、くちばしの形が特徴的なウトウ。横から見るとまるでサイの角のような突起がくちばしの付け根から真上に突き出しています。多くの海鳥と同じように、水掻きのついた足は身体の後方にあり、歩くのは苦手です。

風に飛ばされ内陸に?
本来、多くの時間を海の上に浮いて生活している鳥ですが、低気圧の影響で内陸に迷い込んでしまったらしく、カラスに襲われているところを保護されました。
診察の結果、重度の脱水と右眼周辺の擦過傷が認められたため、輸液後に高濃度の酸素が流れる暖かい保育器の中で休ませました。

特別食をどうぞ
ウトウの主食は小魚。主に収容される猛禽類用の餌は常備してあるものの、特殊な餌のストックはありません。珍客をもてなすために魚屋さんに走り、ワカサギを買ってきました。
4月からスタッフとなった飼育係に手伝ってもらい、ミネラルと一緒に魚を与えます。

体力と天気の回復を
治療が功を奏し、元気を取り戻したウトウ。眼の腫れもだいぶ引いてきました。海鳥は長期間陸上で生活させると、足に血行障害を起こしやすいため、早めに野生に返すことが望まれます。天気の回復を待って、釧路市近郊の太平洋に放すことにしました。

この感触は・・・海だ!
波の穏やかな海岸にウトウを運び、そっと砂浜に放しました。自ら進んで水の中に入るかどうかを観察することによって、最終的な身体の回復具合を見極めます。
海風に促され、水の感触を確かめるように、ウトウは波打ち際からそっと水の中に入ってゆきました。

皆、居るべき場所がある
水に浮かんだ身体がどんどん岸から遠ざかってゆきます。30mほど沖合に出たところでようやく落ち着きを取り戻し、羽繕いや潜水・浮上を繰り返し始めました。自然界に帰って行く野生動物達を見ると、皆自分の居るべき場所がちゃんとあり、そこで生活することが一番幸せなのだと痛感します。
