冬めく森をワシが飛ぶ

執筆: 

フィールドワーク・野外調査

冬めく森をワシが飛ぶ

紅葉の季節もそろそろ終盤。北方から渡ってくるオオワシやオジロワシを出迎えに、道北地方を調査しました。オホーツク海の沿って北上し、北の玄関口”宗谷岬”を目指します。途中立ち寄った森の中で、最初のワシと出会いました。川に沿って羽ばたきながら、ゆっくりと上流に向かって行きます。

じっと川を見つめる若ワシ

川岸にとまる一羽のワシを見つけました。今年、ロシアで生まれ、宗谷海峡を越えてはるばる北海道に渡ってきた若いオオワシです。巣立ってから約3ヶ月、きびしい自然の中で、もう自力で生きて行かなければなりません。
ワシは水の中をじっと見つめ、たたずんだまま…どうやら何かを狙っているようです。

産卵を終えたサケの行方

そっと沢の中を覗いてみると、たくさんのサケの姿がありました。最後の大仕事”産卵”のため、今を盛りと遡上しているのです。
産卵を終えたサケは、やがて力尽きて死んで行きます。自然界にはひとつの無駄も存在しません。このサケの死体も、オオワシやオジロワシ、その他多くの野生動物達のお腹を満たしてくれる、大切な自然の恵みなのです。

環境治療が功を奏した?

ワシ達が旅の疲れを癒し、空腹を満たす道北の森。そのすぐ近くを走る送電鉄塔に、センターで開発した感電防止器具が取り付けられています※。隣の木に目を移すと、オオワシの姿が! 器具による、危険な場所へのとまり防止効果が功を奏したのかも知れません。自然環境を健全なものに保つと共に、人間がもたらす軋轢を一つ一つ地道に取り除いてゆく作業が、彼らと共存するためにはとても重要なのです。
※ 頂上付近に、三本ずつ縦に並んだ棒状の物。詳しくは、HTBのサイト“猛禽類の感電事故を防げ!”(動画)をご覧ください。

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