ロシア_オオワシ調査2

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フィールドワーク・野外調査

ポロナイスク大湿原

ロシア・サハリンの中央部に位置するポロナイスク市。その東部には、広大な湿地帯が広がっており、自然保護区として厳重に保護されています。当地はオホーツク海に面しており、希少種であるオオワシやオジロワシ、さらには多くのシギ・チドリ類の重要な渡りのルートとなっています。しかしながら、近年同島で加速度的に進む大規模なエネルギー開発や石油流出事故などよって、将来この野生動物の楽園が壊滅的な打撃を受けてしまう可能性があります。

万全の装備で調査開始

この夏、ロシア政府の協力の下、当地でオオワシの生息状況を調査しました。
砂州に設営したベースキャンプから、船外機付きのゴムボートに乗り込み、潟湖を横断。湖に流入する原始河川を遡り、船上からオオワシやその巣を探しながら湿原の懐深くに入ってゆきます。

ボイスレコーダが活躍

移動中に得た情報は、もっぱらボイスレコーダー(録音機)を使って記録してゆきます。衛星によって自分の現在地を正確に知ることができる小型のGPSナビや、クマ避け用のトウガラシスプレーは、調査中に事故を起こさないための必需品です。

上陸し、ヒグマとワシの聖域へ

高層湿原帯に上陸し、オオワシの巣を探します。双眼鏡を使った目視調査も重要ですが、微かな音や匂いにまで神経を尖らせ、ワシやヒグマの存在をいち早く察知するように心がけなければなりません。

発見! 夏のオオワシ

グイマツの枯れ枝にとまる、立派なオオワシを発見しました。こちらの存在に気が付いているものの、すぐに飛び去ることもなく威風堂々としています。ほとんどのオオワシ成鳥は、春先に越冬地北海道から北方に渡って行ってしまうため、数ヶ月ぶりの再会でした。

直径3mの巨大な巣

河川沿いに生えたグイマツの頂上に、大きなオオワシの巣を発見しました。直径約3m、厚さ約2m。
あと数週間で巣立ちを迎える季節。親鳥や雛にストレスを与えないように、周囲に気を配りながらそっと観察します。

縦横無尽に走るクマ道

10年間にわたってオオワシ調査を行ってきた、サハリン北東部では、近年ヒグマがオオワシの巣によじ登り、巣立ち前の雛を食べてしまう現象が多く見られています。サハリン中部に位置するポロナイスク湿原でも、同じような状況がいくつか確認されました。写真は、巣近くの湿地帯に伸びるヒグマの踏み跡・・・クマ道です。(写真の左下から右上にかけて、直線状に伸びる窪み)

行きは良い良い、帰りは…?

行きは快適にボートを飛ばした潟湖。潮の干満の差を受け、帰る頃には水深30センチほどになっていました。荷物を積んだ重たいボートを引きずりながら、温かいボルシチが待つべースキャンプを目指します。毎年恒例の肉体労働に、今年もサハリンに来たことをあらためて実感するのです。

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