傷ついたトビの幼鳥

執筆: 

保護した鳥(猛禽類)

思っていたよりも重傷

 今年の夏、1羽のトビが保護されました。まだヒナの羽がわずかに残る、巣立ったばかりの幼鳥です。トビは危険が迫ると腹這いで動かなくなる“死んだふり”をする習性があるので、誤認保護※かな?と思って診てみると、胸に大きな傷がありました。胸の中央の筋肉がごっそりとなくなっていて、夏の暑さもあってウジも湧いていました。若い鳥はまだ飛び方が上手くないため、強風などにあおられて建物にぶつかってしまうことがよくあります。 ※傷病鳥と間違えて保護してしまうこと。錯誤捕獲ともいう。

見た目には治ったけれど

 ウジを払ってよく洗浄し、大きく開いてしまった傷を何度か縫合した結果、見た目にはきれいに治癒したかのように見えました。しかし、無くなってしまっていた筋肉は飛翔に重要な部分であったため、また飛べるようになるか不安でもありました。傷が治ったところで、今度は飛ぶための訓練の開始です。

予想外に早く完治

 まずは飛び上がる練習‥と高さのある部屋に移動したところ、なんとすぐに1mくらいの高さに飛び上がれるようになりました。野生動物の救護に携わっている中で、生き物は人が思っている以上に逞しい、と感じるときがあります。
この若いトビも、私達が思っていた以上の速さで飛翔能力を取り戻し、無事放鳥することができました。生き物の生きる力は凄い! と改めて思う症例でした。

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