苫小牧から遠路輸送
苫小牧から遠路輸送
上川地方の山中で、衰弱したオオワシの幼鳥が収容され、苫小牧のウトナイ湖鳥獣保護センターに運び込まれました。広めのケージの中に入れて半月ほど様子をみていたものの、なかなか高いとまり木に上がることができないとのことで、精密検査や治療、リハビリテーションを私達のところで引き受けることになりました。苫小牧から釧路まで約300kmの道程。途中には雪深い日高山脈があります。吹雪の中、8時間かけて慎重に釧路湿原野生生物保護センターにオオワシを運び込みました。

肘(ひじ)の脱臼と骨折
早速レントゲン検査を行ったところ、左翼の橈骨(とうこつ)と尺骨を骨折し、肘を脱臼している事がわかりました。全身麻酔をかけて関節の状態を検査したところ、幸い重要な腱や筋肉に大きな損傷はありませんでしたが、骨折した骨がすでに不整癒合しかけていました。その状況から、今回は手術によって外科的に整復する事を避け、運動制限とリハビリテーションで飛翔力の回復を試みることにしました。

個室で安静に
低いとまり木しか無い、狭い個室の中で、しばらく安静(ケージレスト)にしてもらいます。入院直後は落ち着かず、ストレスで部屋の壁を蹴ったり、明かり取りの窓に飛び付こうとする行動が見られましたが、時間の経過とともに少しずつ環境に慣れてきました。痛めている左の翼に過度の負担をかけさせないため、食べさせ過ぎによる体重の急増は禁物です。

模様替えも治療のうち
オオワシはれっきとした冬鳥。遅くとも、最後の若鳥たちが渡去する5月中に放鳥できなければ、ケージの中で来シーズンを待たなくてはなりません。限られたスペースの中で、その時々に必要なリハビリを進めて行くことが大事です。入院から数日後、肘関節が固まって開かなくなってしまことを防ぐため、長時間羽ばたくことなく翼を広げさせるよう促すことにしました。鳥の状態を観ながら、とまり木の位置を少しだけ高くするのですが、そのさじ加減は、オオワシの気持ち酌みとることが大切。長年の経験と勘だけが頼りです。
