釧路湿原救急カヌー

執筆: 

保護した鳥(猛禽類)

救急カヌー

 釧路湿原で活動されているカヌーガイドさん達から、「2週間程前から様子のおかしいオジロワシの幼鳥がいる」との連絡が環境省に入りました。親ワシが近くにいるとの情報があったことから、しばらくの間、近くを通りがかる度に様子を見てもらっていましたが、「今日は1mまで近寄っても逃げる様子がない」とのこと。話の内容から緊急性が高いと考え、小雨の降る中、ガイドさんの案内のもとカヌーで現場に向かいました。

発見!!

 カヌーガイドさん達が最初に見つけた場所に幼鳥はとまっていました。近くで親ワシの警戒する声がします。幼鳥はなかなか親鳥に反応せず、ようやく発した声も非常に弱々しいものでした。この時期の幼鳥はまだ自分で餌を取ることができす、飛び方もあまり上手くありません。人が近づいても、全く逃げる素振りを見せず、地面に近い木の枝にとまり続けていることから、普通の状態ではないことはすぐにわかりました。

こんなに近寄っても…

 しばらくの間、観察を続けていましたが、幼鳥は全く警戒の姿勢を取らず、活力も感じられません。検診が必要と判断されたことから、収容を試みることにしました。幾手かに別れて、ゆっくり幼鳥に近寄ってみます。幼鳥は数歩後ずさりしただけ…簡単に捕まえることができてしまいました。ワシは非常に痩せていました。また足の裏がとても汚れていたことから、しばらく地上にいた様子でした。体中に無数のハジラミが発生し、衰弱した時に発症しやすい真菌(カビの仲間)の感染も認められました。すぐにカヌーに乗せ、急いでワイルドライフセンターへと運びます。

現在リハビリ中です!

 幸い、骨折等の外傷は認められなかったものの、重度の貧血があることから、かなり長い間親から餌を与えられていなかったようです。経緯の真相は不明ですが、あと一日でも収容が遅かったら命にかかわる事態であったことは間違いないでしょう。人が野生動物に対して適切な距離を保つことは大切です。しかしそれは無関心となることではなく、相手を気遣いながらお互いが本来の生活を続けられる「適切な距離」を見極めることが大事です。今回はガイドさん達が自然界の異常をいち早く察知し、環境省に連絡して下さったことが救命に繋がりました。 ご協力いただきました皆様に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

記事一覧へ