事故後に食中毒?

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保護した鳥(猛禽類)

十勝の畑で収容

 十勝地方の畑に、飛べないワシがいるとの連絡が近隣住民から寄せられました。役場の職員が現場に急行してオジロワシを保護し、センターに運び込みました。輸送コンテナの隙間から中の様子を伺うと、ワシは起立していますが人に対する反応がとても鈍く、吐き気をもよおしていました。さらに風切り羽根の何枚かは直線的に亀裂が入ったり、折れたりしていました。

事故後に食中毒?

 レントゲン検査や血液検査を行った結果、大きな骨折や脱臼などは見当たらなかったものの、重度の脱水と栄養不良が認められました。胃の中にはまだ消化されていない肉や骨が残存していることもわかりました。状況から、なんらかの事故によって外傷を負い、しばらく新鮮な餌を捕ることができなかったワシは、古い動物の死体を食べて食中毒を起こしたと考えられました。

食欲は戻ったものの

 事故による打撲や食中毒の治療を行いつつ、弱った消化管を休ませるためにしばらく絶食してもらいました。数日後、症状が安定してきたため、大きめの魚を一匹ケージの中に入れてみると、すぐに飛びつき、引きちぎりながら一気に食べてしまいました。食欲は戻りつつあるものの、まだ少し下痢の症状が残っているため、様子を見ながら治療を続けます。

羽根が生え換わるまでは

治療を開始して約一週間。食中毒の症状が完全におさまったので、大きなフライングケージの中でリハビリを開始することにしました。事故による筋肉の損傷や折れてしまった風切り羽根の影響で、大きく羽ばたくものの、なかなか身体が浮きません。当面はあまり無理させることなく、一歩一歩野生復帰を目指してもらうことにしました。

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