ずっしりと重く

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保護した鳥(猛禽類)

若ワシの卒業

 1月中旬、道東自動車道(高速道路)を巡回中のパトロールスタッフが、農家が設置した古いシカ避けの網に絡まり動けずにいたオオワシを発見しました。身体は痩せ、翼やクチバシに擦り傷や切り傷を負っていたものの、幸い大事には至っておらず、センターで治療とリハビリが続けられてきました。

ずっしりと重く

 3月中旬、すっかり傷が癒え、リハビリによって飛翔力を取り戻した若ワシは、卒業の日を迎えました。フライングケージの中で安全にワシを捕獲し、最後の診察を行います。体重約5.5キロ、ずっしりと引き締まった身体は、生まれ故郷のロシアまで渡って行ける体力を取り戻したように感じさせます。

翼の状態を確認

 痛めていた翼を診察し、風切り羽の折れや摩耗の状態を観察します。野生復帰した後、自然界で自活できているかどうかをしばらく確認するため、発信機も取り付けます。さらに環境省が発行する識別用の足環をつけ、野生に戻る準備が整いました。

野生にお帰り!

 分厚い氷が張った風蓮湖にオオワシを運びました。この時期、多くのオオワシやオジロワシがこの湖に集まり、集団で越冬しています。
輸送用コンテナの扉をそっと開くと、一瞬の間を置いて、オオワシは真っ白な世界へ飛び出して行きました。

自由を満喫

 氷の上で軽やかにステップを踏み、力強い羽ばたきとともにオオワシの身体はフワリと宙に舞いました。まるで予め行き先を決めていたかのように、一直線に湖畔の林に向かって上昇して行きます。「この羽ばたき方なら大丈夫!」、見守るスタッフの顔に安堵の表情が広がります。

挨拶だったのでしょうか?

 グングンと高度を稼いだワシは、何を思ったか上空で大きく旋回し、わざわざ私達の頭上を超えて、林の向こう側に消えて行きました。お礼の挨拶だったのでしょうか? いつも振り返りもせずに自然界に帰って行くワシ達を見送ってきた私達にとって、予想外の嬉しいプレゼントでした。

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